#21.プリコックFET

今回は毎回適当に作っていたFETですが、
最近マイコンやタイマーを使わずにプリコックさせるのが流行っているようなので真面目に設計してみます。

真面目といっても一般的な文系の独学なので間違っているかもしれません。
どの程度確かかは内容見て判断するか実際に評価してください。

作るのはこんなのです。

■材料

・FET(IRFB3813
・1/6W抵抗(12Ω、1k
・積層セラミックコンデンサ(1uF50V
・ダイオード(1S4等30V1A以上)
・半固定抵抗(5kΩ

なんでこの値かは後で説明します。
3813に関しては入手性の都合です。
もっと効率良くしたり小型化する場合にはマルツ≒DigiKeyで探してください。

■動作

CN2(トリガー)がONになるとD1とR1を通ってC1とQ1の入力が充電され、
Q1のD-SがONになりCN3に接続されたモーターが回転します。

トリガーから指を離すかカットオフされると、
C1とQ1の入力に充電された電気の放電が始まります。
VR1とR2を通ってバッテリーのマイナス側に放電されます。

OFF→ONの際にはD1を通れるのでVR1を無視して急速に充電され、
ON→OFFの際にはD1を通れない(逆接)のでVR1を通ってゆっくり放電されます。

■設計


回路はこんな感じです。

まずON(充電)時の条件を考えていきます。
今回はLiPo2セル(8.4V)での動作を前提として下記のように定義します。

・電源電圧(VDD、≒Vgs):8.4V
・ゲート容量:75nC

電源電圧はバッテリーの電圧です。
ゲートにはこれとほぼ等しい電圧が印加されるので、
VDDとVgsはほぼ8.4Vとして計算します。

ゲート容量(充電しなければならない容量)はFETのデータシートから割り出します。
自分が使用したい条件でメーカーが測定していることはまずないので適当に導き出します。
今回はVgs=15V、24Vのグラフだったのでその延長で大体75nCとしています。

試験問題ではないので大体で大丈夫です。

先ず任意の時間で75nCが充電される電流の大きさを求めます。
今回は100ns(0.0001ms)で考えます。

75(nC)/100(ns)=0.75(A)

これで電圧と電流が分かったので抵抗の値が求められます。

8.4(V)/0.75(A)=11.2(Ω)

計算で求められた値の部品は抵抗に限らず世の中には存在しません。
大半の部品は1を12の整数倍に等分した値が用意されているので、
計算上の値から設計に余裕が出る方の近似値を使用します。

今回は電流を制限する(充電が遅くなる)方向にしたいので、
抵抗値を大きく見積もって12(または15、18、20、24)Ωとします。

C1の充電時間は抵抗が無いので限りなく0に近いものとして考えます。

次にOFF(放電時)の条件を考えていきます。
必要な遅延時間を先ず考えます。
今回は20発/秒のレートを前提として考えます。

20発/秒ですので1サイクルにかかる時間は下記となります。

1/20=0.05(sec)

よって50msでセクタギアが一回転するということが分かります。
つまりワントリガー1発に収めるためには必ずこの値を下回るように設計する必要があります。

仮に1回転の半分でラックギアを引っ張っているとして、
最大25msの遅延が得られるように設計します。

コンデンサの放電時間は下記の式で求められます。

t(ms)=R(kΩ)C(uF)

tは先程の25msにするとしてRもCも不確定です。
どちらか一方は任意に決定しなければなりません。

今回はCから決めていきます。
C1の値はゲート容量に対して十分(桁3つ)は大きくします。
これはnCの値が確実に確認できないためです。
おおよそ0.01uF(10000pF)としてその100倍の1uFとします。

次にRを決定します。
上記の式のRは回路図上でR2とVR1の和になります。
R2はVR1を振り切った際に電源がショートしないために使用されています。
また遅延時間の最小値を決定します。

R2が小さければ素早く動作を停止できるので小さいに越したことないのですが、
余り小さくしてしまうと消費電流が大きくなり抵抗も大電力用のものが必要になってしまいます。

将来1/10W(表面実装)品に対応させたいので、
今回は1/10W以内で設計します。

1/10(W)=8.4(V)I(A)
I(A)=0.012

およそ12mA(700Ω)ということで余裕を持たせて9mA(1kΩ)にします。
この際の放電時間は完全放電で6ms、3Vまでで1ms程度です。

次にVR1の値を決定します。

25(ms)=R(kΩ)*1(uF)

25kΩで25ms(3V)となります。完全放電には170msです。
3V程度あれば3813は20A程度流してしまうので、OFF時は完全放電時間で計算します。
5kΩで33msになったので今回は5kΩとします。

どちらが正解かは機械的な負荷に依存するので計算ではここまでが限界です。
あと半端に電流を流す時間が長くなるとFETが発熱するので何度か試作(それか部品の差し替え)を行っていきます。


■作成

回路図を確認しながら下記の配線図に従って配線していいきます。





■評価

とりあえずVR1を絞り切った状態で通常と同じレスポンス得られるか確認します。
OKであれば徐々にVR1を回して遅延時間を長くしていきます。

この時にFETの発熱の具合を確認していきます。
常温下で人肌より熱くなるようであれば再設計です。

最小でこんな感じ

最大でこんな感じ

もうちょっと長く時間取っても良かったですね。
具体的には可変抵抗の値を2倍(10kΩ)かそれ以上にします。
(コンデンサの値を2倍にするとサイズも値段も高くなるので抵抗で調整します)

陽炎でトントンするのと同じようにするには足りませんでした。
(そこまでやるならブレーキ付ける必要が出てくると思いますが…)

ここまで書いておいてなんですが、
一回値決めたら「ま、こんなもんでええやろ…」で次回以降使いまわします。

逆に真面目にやると結構面倒くさいんですよね。
これを暗算でやれとか無理ですね。

それではまた。

9/13追記
・可変抵抗の値とリンク、調整方法を追記。

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